この記事の要約
・商談後5分のボイスメモをAIが戦略データに変換
・相手の本音と失注リスクをAIが客観分析
・資料送付が相手の意思決定を後押しする提案へ
商談の振り返りは「事務作業」ではない、最高のリサーチである
商談後、SFAに「先方は前向き」と入力して終わり
――そんな振り返りに意味はありません。
本当に価値があるのは、相手が何を言わなかったか、どこで表情が曇ったかという「空気感」の分析です。
なぜ、あなたの振り返りは成果に結びつかないのか?
多くの営業マンの振り返りは、こうなっています。
- 「何が起きたか(事実)」の記録に終始し、「次にどうすべきか(戦略)」が欠けている
- 「予算は300万円」「決裁者は部長」といった表面的なBANT情報の羅列
- 次回のアクションが「資料送付」で止まる、具体性のない計画
30代・40代の営業マンほど、経験則に頼りすぎて客観的な分析を怠りがちです。「この感触なら大丈夫だろう」という過信が、失注の種を見逃させます。
| 従来の振り返り | AIを使った振り返り |
|---|---|
| 事実の羅列(何を話したか) | 心理分析(相手は何を懸念しているか) |
| 主観的な感触(多分いける) | 客観的なリスク判定(失注要因の特定) |
| 曖昧な次回提案 | 具体的な戦略アクション |
【実践】最小限の手間で、最大限の示唆を得る「AI振り返りフロー」
ステップ1:素材の収集(ボイスメモ・箇条書き)
商談直後、駅までの5分間が勝負です。記憶が鮮明なうちに、スマホのボイスメモに吹き込みましょう。
記録すべき「一次情報」:
- 相手の発言(特に「ただ…」「実は…」など、逆接の後の言葉)
- 顔色が変わった瞬間、声のトーンが下がったタイミング
- 競合他社への言及や、予算・稟議に関する微妙な言い回し
- 自分が感じた違和感(「なぜか話が噛み合わなかった」など)
記録例:
・部長は価格に対して「うーん」と言って5秒黙った
・導入時期について「年度内に」と言ったが、目線が泳いでいた
・競合A社の名前が出たとき、担当者が少し焦った表情を見せた
・「上に通しやすい資料が欲しい」と3回言われた
文字に残らない非言語情報こそ、商談の本質です。完璧な文章である必要はありません。走り書きで構いません。
ステップ2:LLM(ChatGPT/Gemini)へのインプット
高価なSaaSは不要です。ChatGPTの無料版やGeminiで十分に機能します。
情報の機密性を守りつつ分析するコツ:
- 社名や個人名は「A社」「担当者X氏」など匿名化
- 具体的な金額は「300万円台」とざっくり表現
- 技術仕様など機密情報は抽象化(「独自システム」など)
AIはあくまで思考のパートナー。完璧な情報を渡す必要はなく、「壁打ち相手として使う」意識が重要です。
【魔法のプロンプト】商談の「勝ち筋」を炙り出す、戦略分析シート
そのままコピペで使える!「商談深掘りプロンプト」
以下をChatGPTやGeminiにコピペし、[商談メモ]の部分にあなたのメモを貼り付けるだけです。
【役割】
あなたは一流のB2B営業コンサルタントです。以下の商談メモを分析し、成約率を最大化するための戦略を提案してください。
【入力データ(商談メモ・文字起こし)】
[ここに商談の内容や、自分が感じた違和感、相手の反応を貼り付ける]
【分析項目】
1. BANT条件の再確認:
予算、権限、必要性、時期について、読み取れる事実と不足している情報を整理して。
2. 決裁者の心理分析:
相手の発言の行間から、懸念点や期待しているベネフィットを3つ推測して。
3. リスクの特定:
この商談が失注するとしたら、最大の原因は何になるか?
4. ネクストアクションの提案:
相手の心を動かし、検討を加速させるための具体的な「次の一手」を3案提示して。
5. フォローアップメール案:
相手に「この営業は自分たちの課題を深く理解している」と思わせる、知的で丁寧なメール文案を作成して。
【出力形式】
営業マネージャーへの報告にも使えるよう、簡潔かつ論理的なトーンで出力してください。
所要時間:3分
得られる成果: 営業コンサルタントを雇ったような、多角的な戦略提案
プロンプトに込めた「営業マンの視点」と「心理分析」
このプロンプトの設計には、B2B営業特有の勘所が織り込まれています。
1. BANT条件の「不足情報」に着目させる理由
営業マンは「聞けた情報」に満足しがちです。しかし重要なのは**「聞けなかった情報」**。AIに不足を指摘させることで、次回ヒアリングすべき項目が明確になります。
2. 「決裁者との距離感」を心理分析させる工夫
「部長が予算に言及しなかった」という事実から、AIは「稟議を通す自信がない可能性」を推測します。人間の営業マンが見逃す、言葉の裏のリスクをAIが炙り出します。
3. 失注原因を先回りして特定
「競合比較で負けそう」「導入時期が曖昧で優先度が低い」など、AIは複数の失注シナリオを提示します。先手を打つためのリスクヘッジ戦略が立てられます。
AIが見抜く、現場の「空気感」と「決裁者の本音」
言葉の裏に隠れた「リスク」を特定する
「検討します」――この一言の裏には、様々な本音が隠れています。
| 相手の発言 | AIが推測する本音 | 対策アクション |
|---|---|---|
| 「検討します」 | 予算不足、または他社と比較中 | ROI試算資料と導入事例を送付 |
| 「上と相談します」 | 決裁者への説明に自信がない | 経営層向け1枚資料を作成 |
| 「また連絡します」 | 優先度が低い、社内調整が面倒 | 導入ステップを簡略化した提案 |
AIはあなたの商談メモから、「予算不足なのか、信頼不足なのか、それとも社内政治の問題なのか」を切り分けます。
ネクストアクションを「タスク」から「提案」へ
従来の振り返りでは、次回アクションが「資料送付」で止まります。しかしAIを使えば、資料送付という作業が、相手の懸念を払拭するストーリー作りに変わります。
従来型の指示:
- 「提案資料を送る」
- 「見積もりを作成する」
AI活用後の戦略アクション:
- 「稟議を通しやすくするため、競合A社との差分を明示した比較表を添付」
- 「導入後3ヶ月のKPI達成ロードマップを提示し、成功イメージを具体化」
- 「決裁者(部長)が社長に説明する際の想定Q&Aを先回りして用意」
結果: 単なる資料送付が、相手の社内プレゼンを成功させる支援ツールに変わります。
まとめ:AIを武器にする営業マンが、一番早く帰れる理由
商談後の振り返りにAIを使うと、こうなります。
- 駅までの5分間のボイスメモが、戦略的な次の一手に変わる
- 「なんとなく良い感触」が、客観的なリスク分析に置き換わる
- 資料送付という作業が、相手の意思決定を後押しする提案にアップグレードされる
知的でスマートな営業スタイルへのシフト――それは、無駄な会議や資料作りに時間を奪われず、本当に顧客と向き合う時間を増やすことです。
余った時間で顧客に会い、さらに成果を出す。その好循環こそが、AIを武器にする営業マンの最大のアドバンテージです。

