今夜こそ早く寝ようと思っても、気づけば日付が変わっている。明日が辛いとわかっているのに、動画を見続けたりSNSを眺めたりして、就寝時刻がどんどん遅くなっていく。こうした夜更かしは、必ずしも意志の弱さからきている訳ではありません。
夜更かしを続けてしまうのは、日中の報酬不足を補おうとする心理や、切り替えのトリガーが存在しないといった構造的な理由があります。やめたいと思いながらも続いてしまうと、ついつい自分を責めたくなりますが、問題は環境と習慣です。
この記事では、夜更かしが続く構造を整理したうえで、具体的な対策方法を紹介します。研究で効果が確認されている手段も含めているため、これまで試してうまくいかなかった人にも参考になる内容です。
夜更かしがやめられない3つの理由
夜更かしをやめられない理由は、個人の性格や気合いの問題ではありません。行動経済学や睡眠研究の観点から見ると、夜更かしをやめられないのには理由があります。
この構造を理解することで、やみくもに自分を責めるのではなく、適切な対策を選べるようになります。
昼間の報酬不足を夜で補っている
日中に自分のための時間が取れないと、夜になってから報酬を求める行動が強くなります。仕事や家事で一日が終わり、ようやく自由になった時間を手放したくないという心理が働くからです。
オランダの研究者Nautsらによる調査では、夜更かしをする人の多くが「自分のための時間が欲しい」という理由で意図的に就寝を遅らせていることが明らかになりました。昼間に十分な休息や娯楽の時間を確保できていないと、夜にそれを取り戻そうとする傾向が強まります。
この現象は、日中の自由時間不足への「報復」として夜更かしをするという意味で「リベンジ夜更かし(revenge bedtime procrastination)」と呼ばれています。もともとは中国のSNSで使われ始めた表現で、長時間労働で自分の時間が取れない人々の心理を表しています。自己管理の失敗というよりも、時間配分の歪みから生じる問題といえるでしょう。
参考文献: Nauts, S., Kamphorst, B. A., Stut, W., De Ridder, D. T., & Anderson, J. H. (2019). The Explanations People Give for Going to Bed Late: A Qualitative Study of the Varieties of Bedtime Procrastination. Behavioral Sleep Medicine, 17(6), 753-762.
切り替えのトリガーが存在しない
活動モードから休息モードへの切り替えを促す明確なきっかけがないと、時間だけが過ぎ去っていきます。テレビやスマホは次々とコンテンツを提示してくるため、よほど意識的にならない限り入眠準備には入れません。
ポルトガルの研究では、夜更かしを「ベッドに入る前の先延ばし」と「ベッドに入った後の先延ばし」の2種類に分類しています。前者は部屋の照明を消すタイミングを逃すこと、後者はベッドでスマホを見続けることを指します。どちらも切り替えのトリガーが機能していない状態です。
終わりのない活動に身を置いている限り、就寝時刻は後ろにずれ込んでしまうでしょう。
参考文献: Magalhães, P., Pereira, B., Oliveira, A., Santos, D., Núñez, J. C., & Rosário, P. (2020). An Exploratory Study on Sleep Procrastination: Bedtime vs. While-in-Bed Procrastination. International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(16), 5892.
「明日の自分」への想像力が働かない
夜の時点では、翌朝の疲労や不調を具体的にイメージしにくい傾向があります。現在の快適さや楽しさが優先され、数時間後の自分の状態を軽視してしまうのです。
これは経済学でいう時間的割引と呼ばれる心理現象で、未来の損失よりも現在の利益を過大評価してしまう傾向を指し示します。夜更かしによる翌日の影響は頭では理解していても、今この瞬間の娯楽を手放す方が損に感じられるため、結果として行動は変わりません。
さらに、一日の終わりは判断力や自制心が低下しやすいとされています。疲労が蓄積している状態では、長期的な利益よりも短期的な快楽を選びやすくなりがちなのは肌感覚にもあっている事柄ではないでしょうか。
夜更かしをやめるための具体的な方法
夜更かしを意志の力だけで解決しようとすると、多くの場合うまくいきません。一日の終わりは判断力が低下しやすいとされているため、意志だけに頼る方法は不利だからです。
ここでは、環境と習慣の設計によって自動的に就寝時刻を早める方法を紹介します。
就寝時間に実施するルーティンを決める
特定の時刻になったら必ず行う一連の動作を決めておくと、その動作自体が就寝への切り替えトリガーになります。歯磨き、着替え、照明を落とすといった行動を毎日同じ順序で繰り返すことで、身体が自然と休息モードに入る準備を始めるからです。
重要なのは、ルーティンの開始時刻を固定することです。たとえば23時になったら何をしていても中断してルーティンを始めると決めておくと、活動に区切りがつきます。動画の途中でも、作業の途中でも、一度立ち止まる習慣をつけることで、ずるずると続ける状態を断ち切れます。
ルーティンの内容は3つから5つの動作で十分です。複雑にしすぎると続かなくなるため、シンプルで確実に実行できるものを選ぶのがよいでしょう。
筆者の場合、ストレッチ→歯磨き→アラーム設定→読書→消灯としています。
寝室以外の照明を22時で自動消灯にする
スマート照明等を使って、リビングや作業部屋の照明を自動的に消す設定にします。照明が消えると、その場所にとどまることが物理的に不便になるため、自然と寝室に向かうきっかけが生まれます。
自分の意志で照明を消すのではなく、システムに消してもらうことがポイントです。判断を挟まない仕組みにすることで、判断力が低下しやすい夜でも確実に機能します。
スマホのアラームやリマインダーだけでは、無視したり先送りしたりできてしまいます。照明の自動消灯は、強制力を持ちながらも穏やかに行動を促す方法だと言えるでしょう。
翌朝の楽しみを前夜に仕込む
起床時に楽しみが待っていると、早く寝る動機が生まれます。好きな飲み物を冷蔵庫に用意しておく、読みたい本を枕元に置いておく、といった小さな仕掛けで構いません。
夜更かしは「今を楽しみたい」気持ちから起こるため、朝にも楽しみを配置することで時間の偏りを解消できます。夜だけに楽しみが集中している状態を変えることが、行動を変えるファクターになります。
朝の楽しみは大げさなものである必要はなく、5分で終わる程度の小さなものが継続しやすいでしょう。
夜の娯楽を「先に消費」しておく
見たい動画や読みたい記事がある場合、夜まで我慢せず夕方や休憩時間に先に見てしまいます。夜に残しておくと、それが夜更かしの理由になってしまうためです。
この方法は、夜の報酬を減らすことで就寝を遅らせる動機を弱体化させます。すでに見終わっている状態を事前に作り、夜にわざわざ起きている理由を減らしていく方策です。
昼間に娯楽の時間を確保するのが難しい場合は、通勤時間や昼休みといった隙間時間を活用するのもよいでしょう。夜にしか時間がないという前提を崩すことが重要です。
就寝時刻ではなく起床時刻を固定する
就寝時刻を決めても守れないことが多い一方で、起床時刻は外的な制約(仕事や予定)によって比較的固定されています。この起床時刻を基準にして、逆算で就寝時刻を決めるのもよいでしょう。
たとえば6時に起きる必要があり、7時間の睡眠を確保したいなら、23時が就寝時刻になります。この計算を毎日意識することで、夜の行動に対して「あと何時間しかない」という時間感覚を働かせます。
イギリスの大学生を対象にした研究によれば、具体的な就寝計画を立てた日は、計画を立てなかった日と比べて平均12分睡眠時間が長くなり、11分早く就寝できることが確認されています。
参考文献: Hill, V. M., Rebar, A. L., Ferguson, S. A., Shriane, A. E., & Vincent, G. E. (2025). Failing to plan: Bedtime planning, bedtime procrastination, and objective sleep in university students. Sleep Medicine, 138, 14-21.
if-then(イフ-ゼン)プランを作る
「23時になったら、スマホを置く」「動画を見終えたら、すぐに歯を磨きに行く」といった、条件と行動を結びつけたルールを事前に決めておきます。これはイフゼンプランニングと呼ばれる手法で、意思決定を事前に済ませておくことで、その場での判断を不要にします。
if-thenプランは紙に書き出して目に見える場所に貼っておくと、より効果的です。頭の中だけで決めるよりも、外部化することで実行率が高まります。
夕食の時間を固定する
夕食が遅いと、その後の活動時間も後ろにずれ込みやすくなります。
夕食を19時までに済ませるといった基準を設けると、その後の時間配分が自然と前倒しになります。夕食が終わってから就寝までの流れを一定に保つことで、生活リズム全体を安定させやすくなるでしょう。
仕事の都合で夕食が遅くなる場合は、軽食を先に摂っておき、帰宅後は消化に負担をかけない程度にとどめる方法も検討できそうです。
寝室でスマホを使わないルールを設ける
寝室にスマホを持ち込まないだけで、ベッドに入った後の夜更かしを防げます。スマホは次々と新しい情報を提示するため、一度見始めると止め時を見失いやすいです。
充電場所を寝室の外に固定することで、物理的な距離が抑止力になります。目覚まし時計が必要な場合は、スマホではなく専用の時計を用意してください。
オーストラリアの介入研究では、就寝前のスマホ使用を減らす行動変容プログラムによって、参加者の1日あたりのスマホ使用時間が平均23.4分減少し、睡眠時間が平均12.7分増加したことが報告されています。夜更かし傾向も改善されました。
参考文献: Vincent, G. E., Schiller, S., Zhou, S., Kovacevic, A., Shriane, A. E., Lastella, M., & Ferguson, S. A. (2025). A randomised pilot trial for bedtime procrastination: Examining the efficacy and feasibility of the Reducing Evening Screen Time online intervention (REST-O). Sleep Medicine, 127, 293-302.
環境を物理的に変える
行動を変えるためには、環境そのものを変えることも重要です。判断力に左右される方法よりも、環境の制約は常に機能します。
ここでは、物理的な環境変更によって夜更かしを防ぐ方法を紹介します。
スマホの充電場所を寝室の外にする
寝室にスマホがあると、ベッドに入ってからも使ってしまう可能性が高まります。充電場所を玄関やリビングに固定すると、寝室でスマホを使うこと自体が面倒になり、自然と使用時間が減ります。
目覚ましとしてスマホを使っている場合は、専用の目覚まし時計を購入すれば解決する問題です。スマホを寝室に置かない環境を作ることが、ベッドに入った後の夜更かしを防ぐ最も確実な方法でしょう。
最初は不便に感じるかもしれませんが、数日で慣れます。この不便さこそが、スマホから睡眠時間を守るための仕組みになります。
夜専用のタスクを作らない
「夜にしかできないこと」を設定すると、それが夜更かしの正当な理由になってしまいます。趣味の時間、副業の作業、読書といった活動を夜だけに配置するのではなく、日中や早朝にも分散させてみるのも手です。
夜にしか時間がないという状態は、多くの場合、日中の時間配分を見直すことで改善できます。通勤時間、昼休み、仕事の合間といった隙間時間を活用すれば、夜に集中させる必要性は相対的に減少しますよね。
夜を「自分の時間」として確保するのではなく、一日全体で自分の時間を分散させる設計に変えてみる工夫も、ぜひチャレンジしてみたいところです。
まとめ
夜更かしをやめるための方法は、すべて一度に取り入れる必要はありません。
まずは1つか2つ、自分の生活に組み込みやすいものから始めてみませんか?
環境と習慣の工夫を少しずつ増やしていくことで、無理なく就寝時刻を早める事がきっとできるでしょう。

